夫婦関係調整調停の概要
夫婦関係調整調停とは、家庭裁判所で調停委員の仲介のもと夫婦の今後についての話し合いをおこなう手続きのことを言います。
夫婦関係調停調整には、次の2つの種類があります。
- 夫婦関係の修復を目的とする円満調停
- 離婚についての話し合いを目的とする離婚調停
各調停で決定すべき事項としては、次のものが挙げられます。
円満調停 | 離婚調停 |
– 夫婦間の生活費負担について – 夫婦の生活習慣について – 夫婦の育児負担について | – 財産分与の内容慰謝料の有無 – 金額親権養育費の金額 – 支払い方法面会交流の実施方法 |
なお、申立ての時点では円満調停であっても、夫婦関係の改善が見込めない場合には、離婚調停に以降することも可能です。
調停の場では、夫婦が直接顔を合わせるのではなく、男女2名の調停委員が仲介役となって、話し合いが進められます。
夫婦関係調整調停は、次のような流れで進行します。
- 調停の申立てにより、調停期日が決まります。
- 夫婦それぞれが調停期日に裁判所に行き、別々の待合室で待機します。
- 調停委員が夫婦から順番に意見を聞き、両者の意見を調整します。
- 話し合いがまとまれば、調停が成立します。
調停は、あくまで自由な話し合いの場であるため、相手方を話し合いに応じさせる強制力はありません。
そのため、相手方が調停の場に出席しなくても、調停委員の意見に耳を貸さなくても何ら不利益は与えられません。
しかし、調停の場で話し合いがまとまった場合には、その内容で調停調書が作成されて、調停調書は、裁判における判決と同一の効力を持つことになります。
夫婦関係調整調停のメリットとデメリット
夫婦関係調整調停には、次の表のとおり、メリットとデメリットがあります。
メリット | デメリット |
– 冷静な話し合いが期待できる – 第三者の意見を聞くことができる – 調停調書には確定判決と同一の効力が認められる | – 手続きに強制力がない – 夫婦関係のさらなる悪化につながる可能性がある |
以下、メリットとデメリットを順に詳しく解説します。
夫婦関係調整調停のメリット
夫婦関係調整調停のメリットは、当事者同士で話し合うよりも冷静な話し合いが期待できることにあります。
夫婦間の不満や、離婚条件についての話し合いを当事者同士でおこなうと、感情的になり、話し合いが進まないことは多いです。
夫婦関係調整調停では、調停委員が仲介役となるため、落ち着いて自分の意見を相手に伝えることができます。
さらに、調停委員という中立かつ公正な第三者の意見を聞くことで、自分の意見の悪い点を見直せたり、相手の意見の良い点を見つけられたりすることも期待できるでしょう。
夫婦関係調整調停においては、調停委員というフィルターを通すことで、冷静かつ客観的にそれぞれの意見を見直すことができ、話し合いがまとまる可能性を高められるのがメリットと言えます。
夫婦関係調整調停での話し合いがまとまると、調停調書が作成されます。調停調書には確定判決と同一の効力が認められ、内容に違反すると強制執行手続きも可能となります。
夫婦同士の話し合いで作成した合意書には執行力が認められないため、執行力のある調書が作成されるのは夫婦関係調整調停のメリットと言えます。
夫婦関係調整調停のデメリット
夫婦関係調整調停のデメリットとしては、手続きに強制力がないことが挙げられます。訴訟手続の場合、被告が裁判を欠席すると原告勝訴の判決が下されます。
一方、夫婦関係調整調停については、相手方が欠席しても手続きが終了するのみで、相手方には何らの不利益も生じません。
夫婦関係調停は、あくまでも相手方が調停に出席してきた場合にのみ有効な手続きと言えるのです。
また、円満調停については、夫婦関係が修復されるケースは少ないのが現状であります。
円満調停を申し立てることで、逆に夫婦関係の溝が決定的なものとなり、関係がさらに悪化するケースも珍しくません。
円満調停から離婚調停に移行するケースもあるため、円満調停を申し立てる際には最悪の結果も覚悟する必要があります。
夫婦関係調整調停を有利に進めるための方法
夫婦関係調整調停を有利に進めるには、下記の事前準備が重要です。
- 自分の主張を書面にまとめておく
- 主張を裏付ける証拠を準備する
調停手続においては、自分の主張は調停委員に口頭で伝えれば足ります。
しかし、主張を書面にまとめておくことで、主張の漏れをなくすことができ、口頭では理解がしにくい内容もわかりやすく伝えることができます。
そのため、主張をまとめた書面を準備しておくことが、調停を有利に進めるためには重要となります。
また、調停手続は訴訟手続と異なり、必ずしも主張を裏付ける証拠が必要なわけではありません。
しかし、調停委員としても、証拠に基づく主張の方が客観的に正しいと判断しやすいし、相手方を説得する材料ともなるため、調停手続きにおいても証拠は重要であります。
たとえば、夫婦関係の悪化、離婚原因が夫の不貞にあるのなら、写真やメール、LINEのやり取りなどの証拠を準備できると調停を有利に進められます。
調停のための証拠集めは、自分自身では難しい場合も多いです。そのような場合には、弁護士や探偵などの専門家に依頼するのも1つの方法と言えます。