探偵の調査はストーカーになる?
探偵の調査活動は、業務として行われる限りにおいてストーカーとはなりません。
探偵業の業務の適正化に関する法律(以下「探偵業法」といいます。)の2条では、「尾行、張込みその他これら類する行為」による調査を認めています。一般人が特定の相手の尾行や-張込みをすると、ストーカーに該当する可能性もありますが、探偵の調査としての尾行や張込みは、法律で認められた行為です。
(定義)第二条 この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。 引用:探偵業の業務の適正化に関する法律|e-Gov法令検索 |
ストーカー規制法の規制対象となる「つきまとい行為等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」(ストーカー規制法2条)がある行為に限定されています。
探偵の調査は、探偵業務を遂行する目的で行われるものなので、「つきまとい行為等」には該当しません。
探偵の調査は、ストーカー規制法が規制する「つきまとい行為等」に当たらず、探偵業法で認められた行為なので、原則としてストーカーにはなりません。
探偵の調査が違法になるケース
探偵の調査は、原則として違法なものではありません。しかし、次のケースでは、例外的に違法となる点には注意が必要です。
- 探偵業の届出なしでの調査
- 住居侵入・器物損壊などの法令に違反する方法による調査
- ストーカー目的の依頼による調査
それぞれについて詳しく解説します。
探偵業の届出なしでの調査
探偵業を営むには、都道府県の公安委員会に届出をしなければなりません(探偵業法4条)。
探偵業の届出なしで調査活動を行った場合には、探偵業法違反として6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります(同法18条1項)。
住居侵入・器物損壊などの法令に違反する方法による調査
探偵の調査は、法律の範囲内で認められるものです。調査の際に、他人の住居に侵入したり、鍵を壊したりしたときには、住居侵入罪(刑法130条)や器物損壊罪(同法261条)に問われる可能性があります。
近年でも、調査対象を脅迫する、調査対象の車に無断でGPSを設置するなど、法令違反の行き過ぎた調査を理由に探偵が逮捕される事例は少なくありません。
ストーカー目的の依頼による調査
依頼者がストーカー目的で探偵に依頼したときは、探偵の調査も違法となります。
探偵業法は、調査結果が違法行為に利用されることを知ったときは、探偵業務を行ってはならないと規定しています(探偵業法9条)。探偵は、依頼者が調査結果をストーカー目的で利用するおそれがあるときは、依頼を受けてはなりません。
過去には、ストーカーが探偵の調査結果を利用して、殺人事件にまで発展したケースもあります(逗子ストーカー殺人事件)。
素行調査の依頼を受ける探偵としては、調査結果が犯罪目的で利用されることがないように、依頼者の利用目的を十分確認しなければなりません。
ストーカー被害者による犯人調査は対応できる
探偵は、ストーカー側の依頼を受けることはできませんが、ストーカー被害者による犯人調査の依頼には対応できます。
ストーカー事件は、被害内容によっては警察が対応してくれないことも少なくありません。警察が動くには、具体的な被害と何かしらの証拠が必要です。
探偵によるストーカー被害の調査では、犯人の素行調査や被害状況の証拠作成を行います。探偵の調査で犯人の素性や被害内容が明らかになれば、警察が対応してくれる可能性も高くなるでしょう。
ただし、探偵は、ストーカーと直接対面して注意・交渉するといった業務には対応できません。
探偵とストーカーのよくある質問
ここでは、探偵とストーカーについてよくある質問に回答します。
探偵の調査はストーカーやつきまとい行為にならないの?
探偵による尾行や張込みは、探偵業務として行われる限り、ストーカーやつきまとい行為には当たりません。
ただし、依頼者がストーカー目的であった場合、探偵の調査も違法となる可能性があります。探偵は、依頼者の目的を確認して、違法行為の可能性があるときには直ちに依頼を断るべきです。
探偵の尾行や張込みは、法律の範囲内で許されています。調査対象に四六時中つきまとい、調査対象の生活の平穏を害するような調査を行うと、軽犯罪法などの法律に違反する違法行為となる可能性もあります。
ストーカー対策は探偵と警察では違うのですか?
警察は、具体的な被害と証拠がなければストーカー事案では対応してくれない可能性が高いでしょう。
探偵は、犯人の素行調査や被害状況の証拠保全に対応できます。探偵の調査結果を利用すると、警察が対応してくれる可能性が高くなります。