不貞行為の定義
不貞行為とは、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことを言います。
日常用語では、「浮気」「不倫」といった言い方をされますが、民法では「不貞な行為」(民法770条1号)と規定されています。
「浮気」や「不倫」の定義は、人によって違っており、異性と食事をしたり、手をつないだりしただけでも、「浮気」や「不倫」だと言う人もいるでしょう。
しかし、「不貞行為」は、「性的関係=肉体関係」があるものに限られます。
民法では、不貞行為があると、原則として離婚や慰謝料請求が認められます。
つまり、不貞行為になるか否かで、裁判の結論が変わる可能性もあるため、不貞行為と言えるためには性的関係が必要と明確に決まっているのです。
不貞行為の具体例
不貞行為における性的関係とは、原則として異性間での挿入行為を伴う性行為を指します。
もっとも、近年では、同性間の性行為類似行為を不貞行為とする裁判例も出てきており、今後の動向が注目されています。
ここでは、不貞行為とは認められないものや、不貞行為と認められる可能性のあるものについて、より具体的に解説します。
不貞行為とは認められないもの
キスやデート、メールなど、性的関係(肉体関係)のないものは、「浮気」や「不倫」と言われることもありますが、不貞行為とは認められません。
ただし、不貞行為とは認められないものでも、慰謝料請求が認められる可能性はあります。
夫婦間での慰謝料請求の原因は、不貞行為に限定されず、平穏な夫婦生活を営む権利を侵害する行為も含まれます。
そのため、不貞行為とは認められなくても、異性とのキスやデートによって平穏な夫婦生活を営む権利が侵害されたと判断されれば、慰謝料請求は認められます。
性的関係があっても不貞行為とは認められないものもあります。
不貞行為は自由な意思で行われることが前提となるため、強制性交の被害者となった場合には、不貞行為があったとは認められありません。
不貞行為と認められる可能性があるもの
先ほど触れたとおり、近年、同性間の性行為類似行為を不貞行為と認定する裁判例が現れました。
東京地方裁判所令和3年2月16日判決では、「男女間の行為に限らず、婚姻生活の平和を害するような性的行為も不貞行為に当たる」として、同性間の性行為類似行為を不貞行為と認定しました。
これは、最高裁判所の判決ではなく地方裁判所での判決のため、今後も同様の判断がされるかは不確実です。
しかし、同性間の「不倫」が問題となることが増えている現代において、注目される裁判例であることは間違いありません。
同性間の性行為類似行為は、不貞行為と認められない場合でも、慰謝料請求や離婚の原因となる可能性がある点には注意が必要です。
なぜなら、同性間の性行為類似行為は、慰謝料請求の原因となる平穏な夫婦生活を営む権利を侵害する行為や、離婚原因となる「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当する可能性が高いからです。
不貞行為の証拠
離婚調停や慰謝料請求の裁判で、不貞行為が認定されるためには証拠が必要です。
ひと言に不貞行為の証拠と言っても、証拠では1つでも決定的な意味を持つものから、複数の証拠が積み重なることでようやく不貞行為を立証できるものまで、さまざまなものがあります。
ここでは、不貞行為の証拠として代表的な次の3つの証拠について詳しく解説します。
- メールやLINEの履歴
- 写真・ビデオ
- 録音データ
メールやLINEの履歴
不貞行為の相手方とのメールやLINEの履歴は、不貞行為の重要な証拠となり得ます。
ただし、メールやLINEの履歴だけでは不貞行為の決定的な証拠とはならないケースが多いです。
メールやLINEの文面だけでは、必ずしも文面に記載されたことが行われたとは限りません。メールやLINEで性的な文言のやり取りを重ねていたとしても、実際に会ったうえで性的関係があったとの確証を得るのは難しいでしょう。
メールやLINEは、写真やビデオ、ホテルの領収書など、他の証拠と組み合わせることで決定的な意味を持つことが多いです。たとえば、ホテルでの密会直後と思われるようなLINEのやり取りに加えてその当日のホテルの領収書があれば、不貞行為が認定される可能性は高いでしょう。
メールやLINEの文面を確認する際には、文面の内容を裏付ける他の証拠がないかという視点を持つと、有力な証拠が発見されることもあるでしょう。
写真・ビデオ
性行為の場面そのものを撮影した写真やビデオは、不貞行為の決定的な証拠となります。
それ以外でも、ラブホテルから出てきた写真や相手方の自宅に出入りしている写真なども不貞行為の有力な証拠となるケースが多いです。
不貞行為を裏付けるための写真やビデオは、個人で撮影するのが難しい場合も多いでしょう。
不貞行為の証拠を掴むには、探偵を利用するのが効果的です。探偵に依頼すると、単に写真を撮影するだけでなく、日時や前後の状況などを詳細に記録した調査報告書が作成されるため、裁判での決定的な証拠として活用できます。
録音データ
配偶者と相手方の会話を録音したデータも不貞行為の証拠となる場合があります。
最近では自家用車にドライブレコーダーが取り付けられていることも多く、ドライブレコーダーに不貞行為の証拠となる会話が記録されているケースも少なくありません。
配偶者や相手方が不貞行為を認める発言をした場合には、それも不貞行為の証拠となり得ます。配偶者や相手方と話し合う機会があれば、会話を録音しておくことをおすすめします。