探偵をつけられたことに対する慰謝料は請求できる?
探偵業は、公安委員会へ届出をしたうえで、探偵業法という法律の範囲内で行われるものです。探偵業法では、素行調査を目的とする聞き込みや尾行、張り込みなどが認められています(探偵業法2条1項)。
探偵をつけられたとしても、探偵の調査が探偵業法で認められた適法なものであれば、慰謝料を請求することはできません。
たとえば、浮気相手とホテルに入るところを撮影された、会社からの帰り道を尾行されたなどの事実があっても、それが探偵業務の依頼に基づく正当なものであれば、慰謝料請求の対償とはならないのです。
一方、探偵の調査が探偵業法の範囲を超えた違法なものである場合には、探偵に依頼した人や探偵に対して、慰謝料を請求できる可能性があります。
探偵の調査が違法となる場合
探偵の調査が違法となり慰謝料請求の対象となる可能性があるケースとしては、次のようなものが挙げられます。
- 探偵業法の届出をしていない
- 法律に違反する内容の調査
- 犯罪目的での依頼による調査
それぞれの内容について詳しく解説します。
探偵業務の届出をしていない
探偵が調査対象者のプライバシーを侵害するような調査を行えるのは、公安委員会への届出を行い、法律の範囲内で活動しているためです。
探偵業の届出なしに調査対象を撮影したり、尾行したりする行為は、探偵業務とは認められず調査対象のプライバシーを侵害するものとして違法となります。
法律に違反する内容の調査
探偵の調査が、刑法や迷惑防止条例など他の法令に違反する場合、業務として行ったものであっても違法となります。
探偵の調査が他の法令に違反する場合としては、次のようなものが挙げられます。
- 他人のマンションや住居に立ち入っての調査(住居侵入罪)
- 執拗な尾行、張り込みなどのつきまとい行為(軽犯罪法違反、迷惑防止条例違反)
- 調査内容を不特定多数の人に公開する行為(名誉棄損罪)
- 調査対象の車へのGPSの取り付け(迷惑防止条例違反)
犯罪目的での依頼による調査
探偵には、依頼者と契約する際に、依頼者から、調査結果を犯罪行為や違法な差別的取り扱いなどのために使用しないことを示す書面の交付を受ける義務があります(探偵業法7条)。
そのため、依頼者が調査結果を犯罪行為や違法な差別的取り扱いに使用することを知りながら依頼を受けた場合には、探偵の調査も違法となります。
また、依頼者が調査結果を犯罪行為にしようしない旨の書面を交付していた場合でも、調査途中で犯罪行為を目的とした依頼であると気付いたときには、調査を中断しなければなりません。
犯罪行為を目的とした依頼の例としては、ストーカー目的や浮気相手を襲撃する目的での調査依頼が挙げられるでしょう。
探偵の調査による精神的苦痛の内容
探偵の違法な調査によって受ける精神的苦痛の内容としては、次のようなものが挙げられます。
- プライバシー侵害による精神的苦痛
- 疑われたことに対する精神的苦痛
- 探偵をつけられているのではないかとの不安感による精神的苦痛
これら精神的苦痛に対して、探偵の調査が違法なものであれば、精神的苦痛に基づく慰謝料を請求できる可能性があります。
精神的苦痛の慰謝料を請求する方法
精神的苦痛の慰謝料を請求する方法としては、相手方との交渉や裁判があります。
探偵をつけた相手や探偵に慰謝料を請求する場合は、内容証明の送付から始めることが多いです。内容証明には、探偵による違法な調査の内容、精神的苦痛の内容、慰謝料の金額などを記載します。
相手方との交渉がまとまらないときは、裁判で慰謝料を請求することになるでしょう。
交渉・裁判を自分で進めるのが難しい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
探偵をつけられた場合の相談先
探偵による違法な調査をされている可能性がある場合の相談先としては、弁護士と探偵が挙げられます。
弁護士
違法な調査について精神的苦痛に基づく慰謝料請求を検討している場合には、弁護士に相談すべきです。
探偵の調査が違法であるか否かの判断や内容証明の作成、裁判手続などを素人が進めるのは難しい場合が多いでしょう。
探偵に違法な調査を受けている可能性がある場合には、慰謝料請求が可能なのか、違法な調査を辞めさせるにはどうすべきかなどを、まずは弁護士に相談してみてください。
探偵
探偵をつけられているのか、どのような調査がおこなわれているのかを自分自身で見破るのは簡単なことではありません。
探偵をつけられているのかがわからず不安を抱えている人は、自分自身も探偵をつけ返すことで不安を解消できる可能性があります。
探偵をつけ返すと、探偵をつけられているか否かがはっきりするだけでなく、探偵を依頼した人を知ることができたり、探偵の調査が違法なものかどうかを知ることができたりする可能性もあるでしょう。
探偵の調査に不安を感じている方は、自分自身でも探偵に相談してみるのがおすすめです。
探偵をつけられた場合の精神的苦痛についてよくある質問
ここでは、探偵をつけられた場合の精神的苦痛についてよくある質問に回答します。
浮気調査で探偵を訴えることはできますか?
探偵に浮気調査をされた場合、探偵の調査内容が探偵業に基づく正当なものであれば、訴えることはできません。
一方、探偵が探偵業務の届出をしていない場合や調査内容が他の法令に違反している場合などは、探偵の調査によって受けた精神的苦痛について損害賠償を請求できる可能性があります。
浮気調査で名誉毀損された場合は罪になる?
探偵による浮気調査でも、他の法令に違反する行為は違法となります。
探偵が浮気調査の内容を不特定多数の人に公開するなど名誉毀損に該当する行為をした場合には、名誉毀損罪が成立します。